東洋医学

肩こりと鍼灸

肩こりは、多くの方が日常的に抱えている症状です。
「いつものことだから」と見過ごされがちですが
身体は必ずサインを出していますので
ぜひ向き合ってあげましょう。
また、見過ごしてはいけない危険な肩こりも
ありますので、ぜひ知っておきましょう。

あなたが肩こりだと思ったら
「肩こり」です。

まず、肩こりは
「後頭部から肩、さらに肩甲部にかけての
筋の緊張を中心とする、不快感・違和感・鈍痛などの症状」
と定義されています。

つまり、肩周囲に何らかの不快な症状があれば、
それは「肩こり」といえます。
曖昧な定義です。

実際に、
これまでご自身では「肩こりはない」と
思っていたのに、
人から「肩こりがひどいですね」と
言われたことをきっかけに
急にその症状を意識してしまい、
深刻に悩まれる方もいらっしゃいます。

このように、肩こりには
明確で客観的な基準があるわけではありません。

極端に言えば、
ご自身が「ある」と感じれば存在し
「ない」と感じれば存在しない。
それほど主観に大きく左右される現象です。


西洋医学的にみる「肩こり」

明確で客観的な基準はありませんが
肩こりは、西洋医学的的には
主に筋肉やその周辺の血流障害などの問題として捉えられています。

特に関与するのは
僧帽筋(そうぼうきん)
など、首から肩にかけての筋肉です。

デスクワークやスマートフォンの使用などで
長時間、同じ姿勢になり
特に頭が前に出た姿勢が続くと
これらの筋肉が、過緊張状態になります。

その結果、

・筋肉やその周辺の血流低下
・酸素不足
・老廃物(乳酸など)の蓄積

が起こり、痛みやだるさとして感じられます。
ひどい場合は、神経を圧迫して
神経痛、しびれが出ることもあります。

またストレスにより、
交感神経が優位になると
血管が収縮し、さらに血流が悪化します。

さらに
頚椎疾患、高血圧症、心疾患などの
症状として「肩こり」を自覚することもあるため
姿勢や運動に関わらず
常時、自発的な痛みが続いていたり、
痛みがどんどん増していく場合は
医療機関への受診をおすすめします。

東洋医学的に見る肩こり

東洋医学的に見た
肩こりで最も多いのは
「気血の滞り」です。

特に関係が深いのが「肝」の働きです。
肝は“気を巡らせる”役割を持ち
ストレスの影響を受けやすい臓です。

・イライラ
・我慢、緊張
・気を遣いすぎる

こうした状態が続くと、気の流れが滞り、
その影響が肩や首に現れます。

また、

・冷え → 血流低下(瘀血(おけつ))
・過労 → 気血の不足(気血両虚)

といった状態も、肩こりの原因になります。

つまり肩こりは、
単なる筋肉疲労ではなく“全身状態の結果”と考えます。

鍼灸はなぜ有効なのか

・西洋医学的視点

鍼灸は、

・筋肉の深部まで直接刺激できる
・血流を促進する(血管拡張作用)
・痛みの抑制(内因性オピオイドの分泌)
・自律神経への働きかけ(体性−自律神経反射)

といった作用があります。

特にマッサージでは届きにくい
深層筋にもアプローチできるため、
慢性的な肩こりに対して有効です。

・東洋医学的視点

鍼灸による肩こりの施術では、

・肝の気のめぐりを良くする(疏肝理気)
・血の滞りを解消する(活血)
・気を補う(補気)
・脾の働きを高め血を補う(補脾・補血)

ことで、肩こりの根本である滞りをなくしたり
パワー不足の部分を補い、治療します。

その方の体質や状態に応じて、
“流すべきか・補うべきか”を調整できるのが特徴です。

セルフケアでできること

① 姿勢のリセット
1時間に1回、胸を開いて深呼吸をする
→ 肩甲骨を寄せるだけでも血流が改善します

② 温める
首・肩を温めることで血流改善
→ シャワーだけでなく湯船に浸かる

③ 呼吸を整える
3秒吸って、6秒吐く呼吸
→ 副交感神経が働き、筋緊張が緩みます

④ ツボ押し
・おすすめツボ「肩井(けんせい)」
首後ろの大きな骨と肩の先を結んだ線の中点。
肩の筋肉がもり上がっている部分。

・おすすめツボ「合谷(ごうこく)」
親指と人差し指の骨が交わる分かれ目の、
少し人差し指側のくぼみ。


⑤「考えすぎ」に気づく
頭の中が常に動いている状態は、肩こりを強めます
→ 意識的に“何も考えない時間”をつくる

最後に

肩こりには客観的な診断基準がありません。
こうした曖昧な感覚的症状は、肩こりに限らず
私たちの身体の中で数多く起こっています。
だからこそ大切なのは、
診断名や医学的根拠(はもちろん大事ですが)
それだけに振り回されるのではなく、
「今の自分の状態をどう感じているか」
「どこかで頑張りすぎていないか」
「無理がかかっていないか」に
丁寧に目を向けることだと考えています。

施術によって症状を緩和することはできます。
ですが、日常の過ごし方や思考のクセに気づき、
本当の意味で変えていくのはご自身です。

「誰かに治してもらう」という感覚だけではなく
ご自身の状態に目を向けること。

そこから、本当の意味での変化が始まります。

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